歴史の証人

ふと見ると、DJ ブースの端に黒人の男性が座っている。…え❗❔もしかして……その人は、優しい深い瞳でこちらを一瞬見た。目が合った。私はあわてて目をそらしてしまったが、こちらを一瞬見てくれたのは確かだった。

必然

セッションが終わると、DJの女性が喋り始めた。後半の始まりだ。「(省略)…みなさんコールをお願いします!今の72倍くらい!!…」

え❔❗72?…72は私が今会社で使っているロッカーの番号じゃないか。


私がそこにくるのは間違いではなかった。あなたが今この場所にいるのは偶然ではありません。そう言われている気がした。この道で間違いない、そう思った。

ここにおいでよ!

会場に入り、しばらく立ち見をしていたが、これじゃ最後まで体力がもたない…歴史の証人と言われているその人は、最後に出てくるのだ。そして、なんとなく気になる場所があったので移動してなんとか座った。ほっとして小腹が空いた私は、コンビニで買ったおにぎりを食べ始めた。だれかが私のからだに触れた。小さな手だ。見ると、3才くらいな黒人の男の子だ。かわいい。「降りる!降りる!」そう言いながら小さな体で大きな階段を降りようとしている。危ないよ、ママとはぐれたのかなぁ…。

イベントも半ばに差し掛かり、観客席でセッションが始まった。しばらくするとまたあの男の子が、隣に来た。いたずらっ子のようなクリクリな目で私にニコッと微笑むと、また下に降り始めた。あんなに小さな体でどうやってここまで上がってきたのだろう?大人でも大股で一段をヨイショとのぼるような階段なのに…。しばらくうろちょろするとまた下に降りていってしまった。

セッションも盛り上がりを見せていた。名前はわからないが、一瞬女性かなと思うくらいセクシーで繊細でとても身体の柔らかい一番背の高い男性の踊りが気に入った。

ふと見ると、あの男の子がセッションしている場所にいるではないか!自由だな(笑)。端っこで、両足をふんばって踊っている。しばらくすると、なんと、真ん中で踊り始めた。すごい。観客も盛り上がった。その瞬間、私の身体が反応し、涙が流れ始めた。体の深いところからこみ上げてくるような涙だった。まるで、はやくここにおいでよ、あなたの居場所はこっちだよ、と言われていると感じた。